そんな私達に安心したおかげで怒気が増す夏子の冷たい落雷が落とされる。




《夜帰ってきたらフロントの人達に見つかるに決まってんでしょ。もう夜のうちに帰ってくるなんて浅はかなことしたら私と拓人くんの努力無駄だから。そんなことして劇団四季観れなかったら炙るから。じゃ》





言いたいことだけを言い切って夏子は通話を切った。何も反応できない私達を置き去りにしたまま。




私達に入り込むのはツーツーツーという無機質な音だけ。頭が先に追いついた私はガバッと頭を抱えて苦悩に走る。




が、先に口を開いたのはアオだ。固まっていたくせに繰り出された第一声はいつもと何も変わらない飄々としたものだ。





『取り敢えず横浜まで戻ってから考えっぞ』

「う、うす」





アオが電車を調べてくれて時間通りに来たそれに乗り込む。2人で隣同士で座ったはいいが、私は先程の夏子の言葉が暇さえあれば頭の中を駆け巡りいつも通りなのにいつも通りじゃない。