「ちょっと、真面目にやってよ」

『拓人はここで平野さんの腹を満たし、かつ心も満たし、自分の財布は枯渇させるつもりだな』

「口の周りチョコまみれにしながら真顔やめてくださる?」

『美味いよハルも食う?』

「食べる」






アオは口の周りを舌で舐める。一口サイズにパンケーキをカットしてフォークに突き刺すとそれを私の顔に向けて伸ばす。



極々自然なその動きに私も口を開けて一口もらう。




『はいあーん』

「ん、美味しい」

『な!美味いよな。また来よう』

「いいね、ゆっくり食べたい」





いつも無表情で死んだ目をしているアオは美味しいものを食べている時はうきうきしている。まるで幼稚園児だ。にかっと目尻にシワを作って子犬のように笑う。



すると、くすくす、と通路を挟んで隣のテーブルから可愛い笑い声が複数聞こえてきた。そちらに視線を向ければ、3人組の女の子達がアオを見てきゃっきゃっしている。



それに気付かず、未だにパンケーキを口いっぱいに頬張ってもぐもぐするアオ。私は溜息をつきながらティッシュでその口の周りを拭う。




『んっ、んー』

「うるさいちゃんと拭いて」





口の中にパンケーキが入っているのに私にティッシュを押し付けられたアオは、びっくりしながらも、目をギュ、と瞑って私に顔を向けると黙って従う。



あれ。これって普通可愛い女の子が素敵男子にやってもらうことだよな。と思いつつ、目の前のアオの顔が可愛すぎて思わず仕上げに額を殴った。