そうして逸れた視線の代わりに薄い唇が答えた。






『・・・してなくも、ないけど』

「はいキタ!よしキタ!」

『うるさいな本当に』




私のオーバーリアクションにうんざりしたように耳を塞ぐ彼の手を引き剥がす。おい聞けよお前。





「私も好きな人がいるのね。だからその人のために部室が欲しいの!」

『それ、その人のためっていうか自分のためじゃないの』

「違う!断じて違う!私は勝部先輩と両思いになりたいの!」

『いやそれ自分のため、』

「あ、やばい今だけ中耳炎かも耳痛い何も聞こえない」





必死な私の言葉に胸打たれたのか、しつこい私に折れたのか、青井くんは口を結んで、無言のまま私を暫く見つめた。




ふ、と力の抜けた彼の手は耳から離れて、行く場もなく彼の顔の近くで浮遊しているようだ。






『・・・好きな人のためには何でもしたくなるの?』

「そりゃそうだよ」





がくん、と首がもげそうな勢いで頷く私に青井くんはまた再び黙り込む。これはあと一押しでいけるパターンだ。よしよしよし。




「青井くんお願い!好きな人のためなら何だってしたいって思う気持ち、青井くんならわかってくれるでしょ?」

『・・・わかったよ』

「え?」

『だから、いいよって、協力するって』





青井くんの言葉にぶはあっと満面の笑みを浮かべた私に彼は何処かよそよそしく。