『藤井さん聞いてるなら返事してよ。ねえまた無視?』


思いっきり亀裂の入るその空間。



『ほらまたこうやって埒が明かない。それで私達が悪者みたいな?もうやだ』





アオは何を考えているのかさっぱりわからないくらい明後日の方向を見て欠伸をした。こいつはマジで後で処刑。








『────・・・泥沼に家は建てらんねえだろ』









なんて間延びした声の主は欠伸を終えたアオだ。

意味不明な言葉にその場にいた全員が首を捻って眉を顰める。が、言った当の本人は眠そうに瞬きをゆっくり繰り返している。






リーダー格がアオに問い詰めようと口を開いた瞬間、それを遮ったのはアオではない男の子の声。そちらに顔を向ければ、私達に話しかけて雷を打たれた男の子だ。






『市村達がいっつも言えない状況作ってたじゃねえかよ。藤井さんが居ないところでずっと悪口言ってたつもりだろうけど、藤井さんたまに廊下でそれが終わるまで隠れてたの知らねえだろ』

『ッはあ!?何それ。てかなんでいきなり男子が口挟んでくんのよ』







ひた隠しにされていた事実を事もあろうか傍観者だった男子達に露見されて、リーダー格を中心とした女の子達が言い返す。それに今まで黙っていた男子達の怒りも爆発する。






『関係ないんだから黙っててよ!』

『はあ?お前らがつまんねーことで揉める度に放ったらかしにされてた俺らのこと考えろよ』

『アンタ達が入ってくると余計ややこしくなるからでしょ!?』

『俺ら入ったことねえくせに勝手に決めつけてんじゃねーよ』

『いつもの行動見てたらわかるっつーの!』

『俺らだって考える時はちゃんとやってんのわかれよ』

『だったらいつもちゃんとやればいいじゃん!』

『じゃあそっちは俺らのこと言えるくらい完璧なのかよ!』






とまらないとまらないとまらない。爆発したそれはとめどなく溢れ出して爆発する。たくさんの怒号が教室内で飛び交って、廊下からこちらを覗いては色んな人が逃げるように消えていった。