そこでバチッと佳菜子ちゃんと目が合う。佳菜子ちゃんはにぱっと笑顔を浮かべるとアオを押しやって私の手をぎゅうううと握る。小さい割にめちゃくちゃ強い力に驚く。







『春井先輩、明日の休憩お時間ありますか!』

「え?あ、う、うん。空いてる、けど、」






あまりにもその迫力に圧倒されて逃げられずに頷けば、更に私に詰め寄ってくる佳菜子ちゃんはもう至近距離過ぎて怖い。







『じゃあ!私と、回ってくれませんか!』

「えっ、わ、私と?アオじゃなくていっ、」

『──待て。俺も行く』







私と佳菜子ちゃんの顔の間にアオの大きくて細い手がシュバっと滑り込む。

それに驚いてアオに顔を向ければ、奴は眉間にシワを寄せて少し呆れたように佳菜子ちゃんを見つめていた。




だが、佳菜子ちゃんは綺麗な作り笑いをしてアオを見つめるとふふっと可愛く笑った。






『やったー。じゃあ明日3人で回れますね、楽しみ』






それじゃあ!と可愛い笑顔のまま私とアオに手を振った佳菜子ちゃんは足早に去っていった。




私、利用されたのかな、これ。もしかしてももしかしなくても。なんて思いながら隣のアオを見れば呆れ顔のまま。






「ねえ、明日ほんとにいいの?」

『つーか俺ら休憩10時からじゃん』

「あ!!!そうじゃん何ちゃっかりアンタ嘘ついてんのよ」

『優しい嘘、的な』

「いや最低だから」






私のクラスはお化け屋敷で、アオのクラスは喫茶店をやるらしい。なんともまあ普通である。