なんでそんなに優しいの。アオの優しさに悔しくなってバッと顔を上げる。そんな私を優しい瞳で見つめていたアオと目が合った途端、驚いた顔をされる。


そんなアオに構わず先程の言葉を繰り返す。




「なんで?」





そんなに優しくしてくれるの。このままじゃ、アオに甘えて依存して依存して、アオに迷惑をかけることしかできなくなる。どうしてそんな私を許そうとしてくれるの。




アオは私の真剣な瞳を暫く見つめ返していた。瞬きを二度繰り返し、視線を斜め下にずらしながら、その横顔は唇だけをゆらりと持ち上がる。




長い睫毛で影を落とされた瞳は真っ黒で、困ったような笑顔は弱々しい。






『──・・・なんでだと思う?』

「え?」




伏せられたいたアオの瞳がゆらゆらと寄り道をするように。それなのに真っ直ぐと私を妖艶な危険さを孕んだまま捉える。



微笑んでいた唇は、ゆっくりと言葉を落とした。掠れてやんわりと低く、なんだかアオの声じゃないように感じる。





「・・・わかんないよ」

『だろうね。もしもわかってたなら、ハルは─、』




私の返事に穏やかに目を細めたアオはそのまま言葉をするする繋げる。そして1度空に放れた視線は、瞬きの次に私に注がれる。



顎を少し上げて、顔を少しだけ傾けたアオの瞳は私だけをしっかりと捉えた上で、何処か凋落したように、愉しそうに声を放った。