『他人が何かできるほど勝負ごとは甘かねーんだよ』

「・・・うん」

『それに、俺はハルが“行きたい”のか“行きたくない”のか聞いてんだよ。──中途半端に“見てきた”わけじゃねーの、俺は知ってんだからな』






ハルに掴まれた腕が熱くて、それが瞳に伝染して、泣きそうになるのを無意識に耐える。



俯きそうになるのを必死で耐えてでアオを見つめる。奴は相も変わらず無表情気だるげやる気皆無、なんてそんな顔だ。それでも真っ直ぐに、淀みなく見据えてくる瞳は何よりも強い。





「私・・・・・・行きたい」





アオの瞳を見つめたまま零せば、アオは唇にほんの少し力を入れて何か言葉を飲み込むように結ぶと、瞬きと同時に小さく頷いた。




ぐっと引っ張られて立ち上がる。教室の出口に向かって歩き出せば、私達の動きに伴って時が動き出したのか、先生が慌てたように私たちに届かない手を伸ばす。






『ちょ、春井!?青井!?』

「先生、153本目の眉毛落としてきちゃったんで探してきます」

『じゃあ俺は218本目で』

『え?は?おいおいおい』






私達の言葉に頭が到底追いつかない先生ときゃーきゃー騒ぐクラスメイト達に振り返ることなく教室を飛び出し、試合会場に向かって走り出す。