『ままままっ、ちょっ、ま、は、ハルハルハル、はっ、ハル待って・・・!』

「うっるさい」




始まった瞬間、隣のアオが悲鳴が上げたと同時にガタガタガタと慌てて椅子を引きずる音が聞こえた。

かと思えばいつの間にか隙間があったはずの隣は肩が触れ合うほどの距離になっている。いや、近いんですけどうざいんですけど。




「近い暑い邪魔離れて」

『俺はこのままで大丈夫だから気にしないで』

「アオの事情はどうでもいい」





やはりホラーのDVDということもあって、予告関連もホラーばかりである。アオは一々何でもないシーンでも騒いでいる。


設楽会長は大丈夫なのかな、と思いながらそちらに顔を向けて今度は私がびっくりする。そのびっくりにアオも釣られてびっくりしている馬鹿である。




「か、会長、大丈夫ですか?」

『・・・・・・ああ。』




設楽会長はこちらを向くことなく、目をかっぴらいたまま瞬きすらすることなく画面を食い入るように見つめている。最早それがホラーである。



アオも私の横から設楽会長を見て、それこそホラーを見た時のような反応をすると思いっきり会長を指さして私に喚く。





『取り憑いてる取り憑いてる取り憑いてッりゅ、やばいやばいやばい、塩、ハル、塩、塩食べよう!?』

「食べる意味」

『シメジの眼球に塩塗らないと・・・!』

『設楽だ』

『うわあああ喋ったァアアア!』





アオは泣きそうになりながら私にしがみつく。お前もう強がることもしなくなったのかよ。