『もしかして・・・それが喧嘩の原因?』

「うん」








痛みで頬を真っ赤にしながら頷いた私とアオを見て、夏子はサァーと冷めきった顔をすると何故かその場で折りたたみ傘を開く。










『故原くん、傘ないんでしょう?』

『え?あ、そうなんだよー。だから帰り紫春に入れてもらお、』

『私のに入っていいからさっさと帰ろう』










夏子の言葉にわーいなんて夏子の傘に喜んで入る故原くん。夏子達は私達に背を向けるとさっさと歩き出してしまう。





それに慌てて私もアオも引き留めようと声をかける。










「待って夏子!私も入れて!」

『馬鹿が移るから今日は却下』


『拓人、俺の傘に入れてやるって!』

『女の子との相合傘できるなんてなかなかないもーん』

『てめぇ』








「それに、」と振り向きながら故原くんは傘の下から顔を出してピースサインをして笑う。それに首を傾げる私とアオ。










『紫春も春井ちゃんと“仲良く”相合傘して帰りなよ』








それだけ言い捨てると2人はこともあろうか私達を置き去りにして行ってしまった。ぽつん、と取り残された私とアオ。





暫く沈黙が続いていたが、アオが未だに怒りの余韻がある声を私に向ける。









『俺は、謝んねーからな』

「私だって謝んない」









その音だけが西陽が差し込む教室で空気を揺らす。お互いに黙りこくっていたがアオが疲れたように椅子から立ち上がった。