床に手をついて顔をあげる。いきなりの派手な登場に耳を塞いでいたアオとその前に立つ故原くんの視線が何の障壁もなく注がれる。



が。アオは驚いた顔で瞬きを何度かした後、口元に手を当ててくすくす哀れみの笑みを浮かべて私を蔑む。






『ぷ、見て見て拓人。あの人なんにもない所で転んでるよ可哀想だねえ?』









カチン、と怒りのゴングが鳴って「はあ?」と言いながら、立ち上がりかけた所で故原くんが屈託のない笑顔でアオに言葉をぶつける。








『でもアオも今朝同じ所で転んでたじゃん』

『おま、あっ、こら、ばかぁああ・・・!拓人おまっ、ほんとに、ああ、ばかー・・・』







故原くんの言動にビクゥと肩を上げたアオ。噛み噛みになって慌てると耳を赤くして、悔しそうに私の様子を伺った。





私は怒りから一転、いや怒りも含めて。先程のアオと全く同じポーズをして彼に向かって、ぷすす、と蔑み笑う。







「あっれっれー?私は押されて転んだけど、君は“普通に”何も無い所で転んじゃったんだあ?」

『っ、』

「正真正銘の可哀想な人は誰だろうなあ?」

『うるせーぶわぁーか!』







アオは悔しそうに下唇を噛み締めていた。私の言葉にみるみると頬を染めて悔しさが爆発したのか私の頬を引っ張ってきた。