『その好きな子が行きたい期間限定カフェの整理券を死にものぐるいで手に入れた俺らはそれを誰にあげたっけ?はい、ハル』

「山吹先輩にですね」

『まだまだありますけど、山吹先輩が忘れちゃったようなら、大きな声でお教えしますけど、どうします?』




アオの悪魔の笑みに山吹先輩は慌てて首を横に振る。悪魔は満足気に山吹先輩から離れて私の隣に立つ。山吹先輩は次々と慌てて開いていたテキストを鞄に仕舞う。




『は?山吹、何してるんだ』

『すみません会長、俺コイツらに勉強教えるんで今日は抜けます』




山吹先輩の返事に更に眉間にシワを寄せた設楽先輩はギロリと鋭い眼光でアオを射抜く。それに対してアオはあくまで笑顔だ。




『お前、山吹に何を言った?』

『まあまあシメジ先輩怖い顔しないで。山吹先輩に聞いてみたらどうです?』

『山吹』

『あっ、あー!ほら急がないと図書館いっぱいになっちゃうから!』




山吹先輩はさっさと逃げるように私達の背中を押す。「おい」と声だけで追いかけて来た生徒会長よりも先に山吹先輩が生徒会室の扉を閉めた。




『あー・・・明日会長に追い込まれるなあ』

『好きな子に幻滅されるよりキノコにどやされた方がマシでしょ』

「図書館だと喋れないので保健室でもいいですか?」

『あ、うん、え?保健室?』




首を傾げて応答待ちの山吹先輩を置いて、私とアオはさっさと保健室に向かって歩き出す。





◇ ◇ ◇




『・・・それで、明日は何の科目があるの?』

「世界史と英語です」





辿り着いたのは勿論、保健室。保健室の先生は叱るどころかお茶を出してくれる。


私とアオは隣に座って、目の前にはテスト2位の成績を誇る超絶優秀者、山吹先輩。