山吹先輩は気まずそうにアオから視線を逸らし、さりげなく設楽先輩へと移す。そしてビクッと肩を上げて震える。



生徒会室を見渡す限り、白い長テーブルに広げられた教材達に、シャーペン片手に私達を見つめる生徒会役員達。所謂、エリートさん達が集って勉強をしているのだ。




「山吹先輩、お願いします」

『えっと、』





私もそれを見た上で山吹先輩の元に行き、アオの隣に立って山吹先輩を見つめる。アオは自信満々に唇を吊り上げ山吹先輩を見つめる。




『山吹、こんな奴等を相手していたらお前の成績が落ちるに決まっている』

『シイタケ会長は黙るか鍋の具材にされてて下さい』

『黙れアホ井、俺はシタラだ』

『あーはいはいシラタキ会長っすね。はーい』





アオ、お前はとことん勇者なのかとことん馬鹿なのか、馬鹿なんだ。


この学校に君臨する王様に、こうも簡単に暴言を吐けるのはアオしかいないと思う。成績優秀、運動能力抜群、男前、生徒会長の設楽千桐先輩は非の打ち所がない。



こめかみに青筋立たせる設楽先輩など視界にも入れず、アオは屈んで座ったままの山吹先輩の肩に腕を回して耳打ちする。




『・・・山吹先輩、忘れてないっすよね?』



ぴくん、とくつくつと笑うアオの低い声に怯え顔が目を見開かせてハッとする山吹先輩。アオはそんな山吹先輩に更に笑みを深めると再び口を開いて囁く。




『山吹先輩の好きな子のバイト先調べたの誰だっけなあ?ねえ、誰だっけハル』

「私達だねー」




アオは山吹先輩からにっこり微笑んだまま私に顔を向けて、答えを求める。私もそれに微笑んで答えながら山吹先輩を見る。