「どうせ可愛くないっつーの。てゆーかどうせあれでしょ?好きな子は何しても可愛いぜ理論だろ」

『は?何言ってんの』

「大体みんなそうでしょ。好きじゃない子はどうでもいいんでしょ」

『そんなん当たり前だろ』

「うっわー」







ムカつき過ぎて思いっきりアオの頬を掴んでいた手を乱雑に振り回して最後は捨てるように突き放す。アオは乱れた前髪をそのままに顔を戻さず視線だけ私に移す。







その妖艶な瞳に、何も色が見えない瞳に、不思議なアオの瞳に捕まって私は唇を閉じて眉間にシワを寄せることしかできない。










『・・・仕方ねーだろ。好きな子は特別ってことだろ』

「でも私は好きでもないアオのことかっこいいくらいには思うよ?タイプではないけど」








その瞬間、アオが不意を突かれたように目を見開いて、大きくて真っ黒な瞳を微かに揺らす。その読めない表情に私も何故か固まってしまう。










『・・・ハルって本当に俺を馬鹿にするのが得意だよね?』

「は?褒めたんですけど」








アオはほんの数秒のその表情の上にすぐに仮面を取り付け、自嘲気味に微笑む。

それが変に作ったものではなく、アオの本当の表情なのだから私は無愛想な返事しか出来なくなる。