「…もう、いや…」


行く当てもなく、ただただ森の中を前に進む。
携帯も、鞄も学校に置いてきてしまった。
…でも、あんな学校なんて戻りたくない。



"おは…"

"ねねね、琴美の家って両親事故で死んだんだって!!"

"それ…言わないって…"

"うそ、学校でも居場所ないのについに家でも居場所失ったの!?"

"まじウケるんですけど!!"

"え…家でもって…?"

"え、まさかあんたさぁ…うちらのこと友達だと思ってる!?"

"え…?"

"嘘、ほんとに思ってたの!?その顔!"

"あのね、私たちがあんたみたいなのと友達になるわけないでしょ?自意識過剰もいい加減にしたら?"

"ちょっと、言いすぎ~!!"

"だって本当のことじゃん!!"


キャハハ、と頭の中でまわる甲高い笑い声。


…嘘でしょ、皆。
だって、普通に仲良くしてくれたじゃん。
普通に話してたじゃん。
普通に…


"ま、そういうことだから。さっさと出てけよ。"


ドンッと押された肩。
それは、あまり強い力ではなかったけど。


それよりも、心がジクジク痛かった。


大事な人に裏切られた。
友達だと思ってたのに。
これからも、笑い合えると思ってたのに。
そう思っていたのは、私だけだった。


両親の傷を埋めてくれるのは、友達だと思ってたのに。
もっともっと深い傷を心に彫られた私は、もう限界だった。


…お父さんとお母さんと同じところに行きたい。


いったん考えると、もうその子とで頭がいっぱいになって。
私は、上履きのまま学校を飛び出した。