ことさら狙って言ったワケではなかったのだけれど


「何ソレ!?何かカッコ良くない?」


彼女は話しに食い付いてきた。

…なんで?
カッコイイとかそんなんじゃないし。

自分の未来への道を探してるワケでもない。

だってホントに『自分探し』してるんだもん。

《藤堂凛》
って名前は自分の証明にはならない。

17年間の生きた証…記憶が欲しくて

あたしの正体を知りたくて…


家出した理由は他にもあるけれど、今は誰にも話したくない。


それでも彼女は、しつこくあたしに話しかけてきた。

早く居なくなってほしいのに!

「誰かと一緒じゃないの?」

「え~?アイツ?さっきナンパされてさ、とりあえず、えっちしたんだけど…つまんない男だからいいの。ねぇねぇ?アタシこっち来て話ししてもいい?!」

「…ダメ。あたし彼と二人で話したいから。」

「えっ!?」

仕方ないからハッキリと断った。

あたしの言葉に井上も…ハルトもビックリしてた。

だって…これ以上ハルトに話しを聞かれたくないんだもん。


「じゃ…いい。ゴメンね、邪魔しちゃって」

「ううん、ゴメンね」

そして彼女は自分のテーブルへと戻って行った。