「…つまり18ヶ月かけて覚えろって事か…なんで18歳?おれまだ17歳だぜ」

「ここを出る時、お前は18歳になっているだろう?」

「…そうか」


やはり外に出される。

存在しない人間を演じて、死ぬまで他人になりきる事ができるんだろうか?

意外にも未来を想像してみたが…すぐに思い直した。

…どうだっていいさ。

もうおれの生きる目的は達成されてるんだからな。


でも一応、疑問に思う事は山本先生に質問した。

「物心ついた頃の記憶ってのは誰にでもおぼろげにあるだろうけど…この0~2歳あたりの記憶も必要なのか?」

「両親に聞いた出来事って話も多少ないと・な?お前にもあるだろう?」

「ああ…そんな感じでいいのか」

「だから『子供の頃の記憶が曖昧』って点においてはしばらく覚えるのも楽だろうな。問題は小学校に入ってからだ」

「はー…何かおれ、憂鬱になってきた」

「そんな事ないさ。途中で人生どう変わるかわかんないからな」

「ふーん…そうなれば面白いのに」

願わくば、おれが興味の持てる人生を送れますように!

「さあ、誕生だ!」


パチッと
山本先生が手を鳴らした。


そして『おれ』は生まれた。