まず新しい名前を与えられた。


  『古河 陸』


っていう、おれが生まれた時に名付けられた、この本当の名前を捨てなければならない…。

この世にそんな名前のヤツは存在しない。

…いや

存在してるが…ヤツは檻の中で干からびてゆく運命なんだったな。


新しい名前はイマイチ、ピンとこない…

生まれた日にちも変えられた。

変わらないものと言えば…歳と血液型くらいだな。

顔を整形するワケでも、指紋をごっそり変えるワケでもない。

そんなの警察のデータベースを変えた方が早いんだろう。


だとすると…これは国家機密レベルのことなんだろうか?

色々詮索するだけ無駄だって事にすぐ気付く。
おれに『人間としての権利』なんてないんだから。


『教育係』を任された山本って先生にまず渡されたのは《本》だった。

ページをめくってみて、おれは思わず吹き出してしまった。

「なんだよコレ、まるで何かの台本じゃん!」

だけど山本先生は平然と、全てが当たり前の事のように答えた。

「お前の人生の台本だよ。生まれてから18歳になるまでの出来事がすべて書かれている。これから一年を一ヶ月かけて完璧に覚えて自分の記憶にしろ」