一瞬の沈黙がこれほど怖いと思うなんて…


ハルトはあたしの言葉に驚いた様子だった。

そしていつものように優しく微笑んで、こう答えた。


「凛は俺の過去とか気になる?」

「…ううん。あたしが好きになったのは今のハルトだし関係ないって思う」

「でも過去の俺があるから今の俺がいるって考え方もあるんだよ?」


─過去の
  『あたし』か…


存在していたのかどうかもわからない…


初めて見た記憶はないけれど気付いたら空に浮かんでいる─

あの月や星の存在と同じような気がしてる。

ホントは両親なんか存在しなくて
いつの間にか生まれていたような気さえするの…



「俺の方が人には言えない秘密があるかもしれない…それでも凛は俺の事好きになってくれる?」

あたしは強く…はっきりと答えた。

「…それでも好き」

「俺の答えを知りたい?」

「うん…」


「俺はね…凛がどんな過去や経験をしてきたかなんて気にしない。今、俺の腕の中に居る'凛'がすべてだから…」

「…ハルト」

「好きだよ、凛。俺の女になって…」


ハルトの言葉にドキドキと…微かな不安を残しながら


あたしはハルトに抱かれた…