「凛、帰るのか?」


ホテルの一室

あたしが着替えてる時に彼はそう聞いてきた。

「帰る家なんかないもん。パパちゃん知ってるくせに。それとも泊めてくれるぅ?」

「凛…」

「冗談だって、あたしと同い年の娘さんがビックリしちゃうわよね?」

「そんな事じゃなくて。もう一ヶ月くらい家に帰ってないんじゃないか?学校にも行ってないし。ヤバいんじゃないか?どうする気だよ…」

彼は少し諦め口調で言った。

あたしがしている行動を大人が見ると必ず説教してくるの。

当然だろうな。
でも理由をわかって欲しいとは思わない。

「…家には帰るつもりはないよ。あたし一人で生きていくの!」

「何度言っても無理か…凛、それでもいいけどあんまりムチャしないでくれな」

そう言うと彼は財布からお金を出して、あたしに渡した。

『五万円』

それが今夜のあたしの値段。

あたしは遠慮する事なく、差し出されたお金を自分の財布にネジ込んだ。

高校の制服を着てホテルを出る。
制服着てても出入りできるなんてビックリなホテルだなって思ってた。

ホテル代はもちろん彼持ち。

『和田アキラ』は

あたしを援助してくれる42歳のオジサンだった。