凛は義父と一緒に居ると言っていた事を思い出した。

片方の《藤堂》は義父の番号なんだと思ってオレは迷わず発信した。

『…RRRR』

頼む…親父が出てくれ…!

『もしもし?平田先生?』

「!」

男の声だ…!間違いない、凛の義父だろう。

どうする?声を出したら違う人だってバレる?

悩んでるヒマも考えてるヒマはない。オレはマイク部分に口を近づけ、手で囲いをつくる。

まるで《内緒話し》をするみたいな感じで、声をこもらせてみた。

「…藤堂さん?今どこに居るんですか?」

これでごまかせるだろうか…お願いだ!騙されてくれ…!






『先生のオフィスに居ますよ?こちらに来ますか?』

…やった!

「り…凛は?」

『眠ってますよ。先生からいただいた睡眠薬でね』

そこで、オレは電話を切った。

怪しまれるだろうか?

いや、それよりも凛の居場所がわかったんだ。

奴のオフィス…オレは奴の名刺を探し出し、その場所を突き止めた。

今、自分が居る場所の住所と…同じ市内だ。

ここからどれくらい?来た事のない土地だったから、わからなかった。

オレはそこらにあった奴の上着をはおり、とりあえず外へ出た。