山本は暴れ…やがてその動きはゆっくりになり、動かなくなった。

…どく…ん

…ど…く…ん…

ど…く…………


動かなくなってもオレは奴を離す事はできなかった。

絶対に、確実に死ななきゃ離せない…そう思って。

やがて傷口から流れ出していた血も止まり

オレはようやく奴から手を離して起き上がった。

手首を取り、脈を確認する────

───終わった…

終わったんだ。
もう、奴は起き上がってはこない。

一人…
また、人を殺した…

…もう今度こそ死刑だな?

生かしておけば必ず凛の障害になったのだから、悔いはなかった。

だけど、この胸の罪悪感は消えない。

今すぐにでも自殺したい衝動をなんとか押さえて、オレは自分の居場所を調べた。

よく見ると、ここは普通のマンションらしかった。
家具も揃ってるし、山本が持ち出してきたナイフは包丁だった。

ちゃんと服や…食器類、洗剤もある。生活感があるんだ…

ここは──奴の自宅だったのか?

玄関の下駄箱の上に置かれていたダイレクトメールの住所を見て、自分がどこにいるのかわかった。

そのダイレクトメールの宛名──〈平田〉とある。

〈山本〉は偽名だったのか?