最初、何が起きてるのかわからなかった。

陽菜が運ばれた部屋はしばらくの間、静まりかえっていた。

代わりに隣の部屋が騒がしくて…しばらくすると赤ん坊の声が聞こえてきた。

その後、いきなり数人の医者や看護師らしき人が陽菜のいる部屋に入ってきたかと思ったら…

突然オレと母親は、その人達に言われたんだ。


『手を尽くしましたが、力不足でした』

って。一体何の事だかわかんなくて母親の方をチラッと見た。

しばらく黙っていた母親は突然、その人達に怒鳴り始めたんだ。

『チリョウシテナイ』

とか

『イシャリョウセイキュウスル』

とか何とか…
意味がわからなかったけど、看護師の一人にオレだけ案内された部屋には

呼吸をしていない陽菜が寝かされていた。

案内してくれた看護師が言う。

『イモウトサンハシンデシマッタノヨ』

オレはこの人が何を言ってるのか理解できなかった。
知らない言葉…

陽菜がもう起きる事はないって理解した時

スゴいショックをうけた。

人が死ぬって事は何となく…理解してたと思う。

でも七歳のオレに
『大好きな人が死んだ。だから悲しい』
って感情は育ってなかった。