そして気絶するまで殴られた。

大して時間はかからなかったはずだ。

オレはすぐ暗闇に堕ちていき、奴らの手によって何処かに運ばれた。







  ──ずっと
  夢を見ていた…


今でも覚えてる。

自分の手もまだ小さかった頃なのに、陽菜(ひな)の手はもっと小さかった。

陽菜という名前はオレがつけた。
生まれた時からオレが世話をしてオレが陽菜を育てた。

母親は育児放棄。

ただオレ達を産んだだけの女だった。

父親は家にほとんど帰ってこなかった。外で女を作って、その女と暮らしていたらしい。

オレ達は望まれない子供なのだと

子供ながらに悟るのは容易かった。

それでも母親の気を引きたくて、色々してみたけど、母親はオレ達兄妹に何の興味も示さなかった。

'この人は親じゃない。きっと血の繋がりもないんだ'

…そう思った。

だからオレは
『陽菜だけはオレが愛そう』
って思った。

大事な妹。

この世にたった一人
血の繋がった肉親。

心臓が弱く、身体も小さかった陽菜を大切な宝物みたいに育てようって思ってたのに


──陽菜は殺された。

まだたった三歳。
この世に生まれて三年しか経ってなかった。