「逆戻り…?また刑務所へ入るって事?」

「多分な。さぁて…藤紀も暴れて大人しくなっただろう。藤堂さん、先に行ってください」

そう言って先生は部屋の鍵らしいものを義父に手渡した。

「わかりました。では後ほど」

平田先生は車を降り、ドアを閉めたのを確認し、義父が運転席に座っていた男に声をかける。

「例の場所だ。行ってくれ」

「…」

男は無言で車を発進させた。

「どこ行くの?!」

「…」

「先生も後から来るって…アナタ達、何する気なのよ!?」

「しばらく凛も静養が必要だろう…落ち着くまでの部屋を借りた。先生もしばらくお前のカウンセリングをしてくださるそうだよ」

「ウソだ!そんな気なんかないくせに!」

あたしは
この二人の玩具になり下がるのだと思った。

抵抗しても大人にはやっぱり勝てないんだ…!

相変わらず、義父はあたしを無理矢理、抱きしめ言った。

「みんなお前が心配なんだ…お前を愛してるんだよ…」


助けてくれる人は誰もいない。

藤紀も先生の手に落ちただろう…

もう会う事もない──

──もう逢えない


そしてあたしは
この世で一番大嫌いなヤツに拉致られた。