彼が言ったのだから本当の事なんだろう…

そして、また彼も信じられないでいた。

「凛…本当に記憶が戻ってるのか?その記憶が正しいのか…?本当にお前は…有馬の娘なのか…?」

あたしから涙が一粒、溢れ落ちた。

「あたしの本当の名前は有馬 凛なの…七年前に両親が殺された事は本当…あたし、お墓にも行ったのよ…

ねぇ

本当に貴方が殺したの…?」

「オレの…オレの本当の名前は『古河 陸』そして…確かにオレは七年前…有馬夫妻を殺した。オレが殺した」

「…どうして…?」

あたしは理由が知りたかった。
新聞には
『殺人は誰でもよかった』

そう書いてあったのを思い出した。
でも何か理由があるハズよ。

だけど藤紀が答えた言葉はあたしを納得させるものではなかった。

「理由なんかない…」

「ウソだよ!絶対に理由があるはず!なんで答えないの…!!」

「そこの人!早く避難して下さい!」

あたし達を見つけた消防士の人達が大声で言った。
今は逃げなきゃいけないのはわかってる!

だけど、だけど…

躊躇っていた時、藤紀はまたあたしを抱き上げて出口へと向かった。

「いいよ!もう歩けるから…藤紀…っ」