急に山本先生の言ってた事を思い出す。
【オレ】はオレじゃない事。

外に出てはいるが罪人には違いない事。

自由に生きる事も
自由に恋をする事も

好きになった人と結婚して子供を設ける事も

何もかも【北川藤紀】として生きなければならないって事実。

父親の会社を守らなきゃならない事
母親を愛さなきゃならない事も

すべてが足枷。

凛を愛しちゃダメだって事にようやく気付いた。

…どうかしてたな…オレ。

普通の女のコを好きになって愛するなんて不可能なんだよな。
まして…幸せにできるハズもない。

犯罪者だと知ったら…凛はどう思う?

凛には言えない
こんな血にまみれた手で腕で…彼女を抱けない。

そして後悔した。

凛に好きだと告げてしまった事。

凛にキスしてしまった事。

悪い事した…!
凛はきっと期待してる。

オレと一緒にいられる事を…オレと愛し合える事を。

そんな期待には答えられないのに、何て残酷な事をオレはしたんだろう?

どうすれば嫌われるコトができる?

凛が退院して家に戻ってきた時、オレはどうしていいかわからずに凛を無視するしかなかった。

それも耐えられずに家には帰らないようにした。