あたしと藤紀の間にある白いドア一枚。
多分数㎝の厚みしかないくせに動かせずに、あたしの前に立ちはだかっていて、藤紀に触れられないようにしていた。

中から返事はない…だから余計に藤紀が怖かった。
それでも思ってる事を伝えたくて、あたしはドア越しに話しを続けた。

「あたしの事…好きって言ってたのはやっぱり撤回するって事?気が変わっちゃった?」

『…』

「それとも、あたしが勘違いしただけなのかな…そうだよね…あたしの身体汚いもん…たくさんの男とSEXしたし…」

『…』

「父親ともしてたし…藤紀はよく知ってるものね。気が変わって当然だよね!こんなあたしを好きになってもらおうなんて…図々しいよね?」

YESともNOとも返事がなかった。

もう何を話していいかわからなくなっていた。


  「カチャリ…」


そして静かに遠慮がちにドアの鍵が閉まる音がした。

「…!!」

ドアは開けられるのじゃなく、さらに拒絶された。
これが藤紀の答えなんだって…すぐにわかった。

あたしはドアに手を当てた。ヒンヤリと冷たい感触…同様におでこもドアに当てた。

氷みたいな冷たさ…

けれど眼からは熱い雫が流れ落ちていた。