警察に捕まった時、

『おれはもう終りだ』
なんて思わなかった。

捕まらないように手袋とかしていたワケじゃなかったし。
指紋なんて家中に残していった。

犯行に使った凶器も丁寧に置いてきてやってたし

…それらの遺留品を辿れば案外早く『おれ』にたどり着くだろうと予想していた。

案の定、アイツらもバカばっかりじゃなかったらしい。

数日でおれを見つけたのは褒めてやる。



捕まるまでの数日…

おれはいつもと変わらない生活をしていた。


家でしていた事といえばテレビのニュースと新聞のチェック。

おれのやらかした事件の報道を眺めていた。

《夫婦惨殺される》

そんな見出しが世間を賑わす。

近所付き合い、親戚、交友関係…殺された奴に問題はあったのか無かったのか

そんなのじゃ、おれにたどり着かないぜ?

だって無関係だし。


でも…一つ誤算があった。

報道の中で知った。


一人娘が…あの時家にいたって事。

居ないハズだった。

あの日、娘は林間学校で一晩留守の予定だったのに…風邪をひいたらしく部屋で寝ていたらしい。


あの物音…多分あれを見られたんだ。


『殺せば良かったかもな』