何故だろう?

サラに聞かれると素直に自分の事話せるの。

サラは手慣れた感じでメイクをしていった。

いつも他の人にもしてるのかな?
そう思わせるくらいだった。


「何か理由があるんだろうから…仕方ないけどね。それならいつもこうやってキレイにしてなさい」

「…どうして?」

「女のコだから。大切な事よ?女は化粧して武装するのよ。素顔は愛した人にだけ見せる。そうしなきゃ…強く生きてなんかいけないのよ」

「…」

サラは不思議な事を言う…。
説教するワケでもなく同情する素振りを見せるワケでもない。

生きる為の術を教えてくれてるのかな…?

あたしの中で熱いものがこみあげてきた。
冷えきっていたあたしのココロに。

更にサラは優しい声で話を続けた。


「私もね、17歳の時に家出したの。ずっと…自分の身体の事とかに悩んでて辛かったのね。家出して…ここのママに出会った」

「悩んでいたの…?」

「うん。子供の頃から…どんなに自分を誤魔化したって…どんなに鏡で自分の裸体を見たってココロは女だったから」


『性同一性障害』

サラの話は多分そう呼ぶのだろうと…聞き覚えのある単語を思い出していた…