「…結局、あの人は何者だったんだろう」
私の呟きは欅の葉擦れの音に消えていった。
考える必要ないよね、どうでもいいことなんて。
お弁当を食べ終えてチャイムが鳴るまで休もうと欅の木に体を預けて目を閉じた。
「やーっとみつけた!」
「…え?」
こんなところまで来るとは思ってなかったから幻聴が聞こえたと思った。
少し息の上がった声で勝手につけられた私のあだ名を呼ぶ。
散々走ったはずなのに彼女は私を見た途端にはにかんだ。
それを合図に私は急いで立ち上がる。
「わ!ちょっ、ちょっと待ってってば!」
「え、わ……っ!」
走り出そうとした瞬間に振った腕を背後から掴まれてバランスを崩す。
後ろから引っ張られるようにして掴まれたせいで後ろへと倒れる。
制服が汚れてしまった。最悪。
「ご、ごめん!大丈夫!?怪我してない!?」
そして私の我慢も限界だった。