旭とそんなやりとりをしていると私の前を歩いていた乃々葉がいきなり立ち止まった。



当然後ろにいた私も少し間隔を空けて止まる。



振り返った乃々葉は眉間にシワを寄せて苛立っていた。



「さっきからイチャイチャしてうざいんだけど!?
ただでさえ人混みの中暑いのに、さらに暑苦しいんだけど!?」


「い、いやイチャついてないし……っ!
旭が勝手に構ってくるだけだから…っ!」


「はい嘘~!満更でもない顔してるの分かって言ってんの?大体ね……っ!?」



互いにヒートアップしだした途端、乃々葉は視線を私の背後に向けると言葉を止めた。



そして乃々葉はいつもするはずのない驚いた表情を浮かべている。



乃々葉の視線の先を辿るようにして振り返るとそこには乃々葉と同じく目を丸くした中年男性が立っていた。



手には屋台で買ったと思われる焼きそばやたこ焼きを両手で持っていた。



「……んで……なんでここに……いんのよ…」


「…乃々葉、なのか……?ほんとに……」


「……っ!!」



乃々葉は男性に名前を呼ばれた瞬間に更に目を見開いて持っていたかき氷を私に渡すと男性に背を向けてその場を去ろうとした。



「ま、待ってくれ!乃々葉!お前をずっと探してたんだ……!」


「……」



男性の言葉に走り出そうとした乃々葉の足はピタリと止まった。



探してた。
男性は乃々葉と会いたがっていた様子だけど、乃々葉の行動から乃々葉はそうは見えない。



乃々葉は二度と会いたくなかったみたいだ。