「聞いて、いただけるか」

ドギマギしている私に、彼はやさしい声で

聞いてくる

「は、はい!」

「…心得た、では」

彼は尺八を吹き始めた

…地を這うような低い音から始まり、そのう

ち高音へ

寂しげな、しかし体を包み込むような温か

い音色が、神社の境内に響き渡る

周りには誰もいない

私達だけ

彼は上半身を揺すり、眼をつむって尺八を

吹いている

あたかも、尺八と一心同体になったかの如



音色は高くなり、低くなり

私も、眼をつむる

音色に、身をまかせる

…………