嬉しいやら、恥ずかしいやら…

「ありがとう、テツ君も、かっこいいよ」

「そうか、実は姉者がこおでねえとしてく

れたのじゃ。」

なるほど…いつも黒いビジネススーツをまと

っているレイコさんが『こおでねえと』す

ると、こうなっちゃうのね…

でも、長身でスポーツ刈りのテツ君には、

黒ずくめスタイルが似合っているかも

「では、いざ」

テツ君が促す

私たちは、駅までの長い坂道を下っていく

JRの駅から電車に乗り、2駅でこの街の一

番大きいターミナル駅へ

私鉄に乗り換える

電車は、しばらく地下を走るが、そのうち

地上に出て、住宅地を縫うようにして走る

テツ君は初めて電車に乗った子供のように

(いや、実際、彼にとっては初めての経験な

のだろうが)、物珍しそうに車内や車窓を眺

めている