私は、目の前で切腹なんか見たくなかった

から、怖くて「やめて!」と叫んだだけなの



他人のために、自ら犠牲になろうとする

そんなこと、私にできるだろうか

「あ、あのね、もうおなか切ったら、あか

んよ?」

ああ、私ったら…もっと気の聞いたこと、言

えないかな?

もっと、スマートな会話できないかな?

テツ君はあわてている私に対して

「うむ、案ずるな

何せ、ひとつしかない腹じゃ、しかもいた

いだろうしな」

と、楽しそうに答える、さらに

「…りおかどの、そなたは、優しいな」

と、続けられる

私は嬉しいやら、恥ずかしいやら、カアア

ッと体が熱くなる

「あ、いや、私は…」