ある日、杏奈が病室にやってきた。





あの後から、俺は入院してる。





「頑張ろうね」 「大丈夫だよ」





どれも優しい言葉なのに、俺にはもう未来なんてないんだと感じた。






だって、ほら。







頑張って治そうじゃなく、頑張ろう







大丈夫、治すから。じゃなくて、大丈夫。







もう、終わるんだ、そう思うには充分だった。






日に日に父は優しくなり、距離もさらに縮まった。






そうすると、自然に杏奈のことを話していた。







「俺にもね、愛する人ができたんだ。」




って。







「後悔なんてしてないよ」






って。