小さい頃、死んだらみんな天国に行けると信じていた。

天国は沢山花が咲いていて、頭の上に輪っかをつけた天使も居て、とても楽しい所。

あまり悪事を起こさなかった私は当然天国に行けると思っていた。

が、違うらしい。

私が目覚めた場所は沢山の花が咲いていなければ、頭の上に輪っかをつけた天使も居ない、天国とは言えないような場所に居た。

制服で、どこにでもありそうな知らない公園、普通に太陽が出てる場所なんてきっと天国ではない。

「何してるの」

頭上から声がして、私は顔を上げる。

見た目は私と同い年ぐらいだろうか。

茶髪の男の子の色素の薄い瞳に私が映る。

「…ここ…どこ?」

質問の答えになっていないとかどうでもよかった。

彼は少し目を見開く。

確かに、こんな明るい時間に制服で公園のど真ん中に座り込んでいる人がここはどこだと聞いてきたら誰だってそんな反応はするだろう。

私は立ち上がり、スカートについた砂を払った。

「私、家出したの。

家を飛び出したら知らない場所に来ちゃって」

私は精一杯の笑顔を向ける。

彼は少し間をあけてから口を開いた。

「ここは青葉村。

僕、零。君は?」

少し高いその声は何だか耳触りが良くてほぼ無意識に名を名乗る。

「遥」

風が吹いて零と名乗った人の柔らかそうな髪がふわっと揺れる。

きれい。

なんて滅多に思わないのに彼をみているとその言葉が口から出そうになる。