ローファーを履こうと思ったが、靴を履かずに走ったせいで靴下が砂だらけになっていた。

靴下を脱いで、ベンチの背もたれにかける。

そうして、また空を見上げる。

辛い。

何となく吐き気がするのを我慢して、星を見る。

「お前なんて居なければよかった」

その言葉が頭のなかでぐるぐる渦巻いて、胸がぎゅっと苦しくなる。

誰からも必要とされない私は生きてて意味あるのかな。

前は、楽しかったな。

「いただきます」って三人で揃って言うこと。

「いってらっしゃい」って笑顔で手を振ってくれること。

「頑張ったね」って褒めてくれること。

お母さんは確か少し白髪が増えていた。

お父さんは確か少し暴言が増えていた。

もしかしたら、私が何かしていればこんな風にはならなかったのかもしれない。

でも、何かってなんだろう。

私はそのときから家に帰るのが嫌いだった。

学校に行っても居場所はない。

家に帰っても居場所はない。

だから帰ってきて、すぐ部屋に籠ってイヤフォンを耳につけ、周りの音をシャットアウトして布団のなかでうずくまっていた。

嫌いだった。

全部。

お母さんの少し困ったように笑うようになった笑顔も。

お父さんの冷たい目も。

何でも分かっているかのように話す先生も。

平気で人を傷つけるクラスメイトも。

大嫌いだ。