リビングに入り、椅子に座ると秋さんは紅茶を淹れてくれた。

「遥ちゃん、だったよね。

零ちゃんからどこまで聞いた?」

私は紅茶を一口飲む。

「どこまでとは?」

零の方を見ると零は首を傾げた。

「あれ、言ってなかったっけ?」

こくんと頷くと零は「それじゃあ…」と話し始めた。

「秋さん、実は結構有名な料理研究家なんだ。

で、料理の方で家を出てることが多くて。

ここに住んでるのは秋さんだけじゃなくてもう一人居るんだ。

名前は優。遥と同い年なんだけど、ちょっと色々あって部屋に籠るようになっちゃって…

その優の面倒をみてほしいんだ。

…どうかな?」

零は苦笑いをする。

どこからか風が吹いて、零の髪の毛がふわっと舞う。

あぁ、やっぱり綺麗だな。

「今も部屋に居るの?」

「うん」

私は椅子から立ち上がった。

紅茶の水面が円を描くように波打つ。

「なら、挨拶に行かなきゃだね」

そう言うと零は目を細めて笑った。

「そうだね」