私の傷は結構酷かったようで跡が残るかもしれないと言われた。…仕方…無いよね。
「とりあえず腕の傷。腹部のアザ。それから足の骨のヒビ。それが良くなるまでは安静にしていて下さい。足は特にですよ。折れたら大変ですので。」
私の体…傷だらけだなぁ…あはは
「ありがとうございます。」
「では…私はこれで。」
「菜穂…しばらくは安静にね?」
「気をつけるよ。直也君帰らなくても大丈夫なの?」
「父さんに許可取ってあるし大丈夫だよ。しばらくは…菜穂の近くにいたい。」
直也は凄く私の事を心配してくれていた。
なぜだか凄く嬉しい。
「直也…あのさ…他に思い出してない記憶あるなら…教えて欲しいんだ…」
「…本当に?」
「うん。教えて欲しいんだ。きっと知ってるのは直也だけだから。」
〜直也side〜
俺は前まで菜穂にばれないために眼鏡掛けてた。
簡単に言うと伊達メガネってやつ?
それも今日からいらないな。
そう思って眼鏡を外す。
外すと懐かしい風景がまわりを覆った…
菜穂に教えてやらなきゃ。
俺達の大事な場所…
「ここ。俺と菜穂が出会った場所。」
丘の頂上には十メートル以上はあるであろう大きな木がそびえ立っていた。
今は六月。しかし頭の上には明るく満開に咲いている桜の花があった。
この桜は何故か必ず梅雨に咲く。
だからこの木の名前は梅雨桜。
俺が7歳位の時俺はここの根本で音楽機器でピアノの音を聞くのが大好きだった。
いつも通り桜の根本へいくと木の裏側からヴァイオリンの旋律が聞こえていた。
気になった俺は木の裏側を見てびっくりした。俺と同い年位の女の子が細かな旋律を一度もとめずに弾き続けていた。
俺はその子に魅了されたよ。それが菜穂だった。
音が早くなった瞬間に風が吹いて花びらが舞う。
あの時の光景は一瞬だったけれどあの光景を越す場所を見た事が無かったほど美しいと思った。
ヴァイオリンの音だけで風も桜も雲でさえも動かしている気すらした。
声かけられた時は凄くびっくりした。
「君だあれ?」
「え、ええと…」
僕をみて何か思い出したように話し出した。
「君ってもしかして天才少年ピアニストさんだよね!すごーい!この前てれびに出てた!まさか会えるなんて!」
「う、うん。そうだよ。この前てれびに出さしてもらったんだ…」
僕はその時から天才少年として紹介されていた。
父親が有名な作曲家だったため特にだった。
…本当はピアノも音楽も嫌いだった。
父さんが勝手に始めさせてそしたら人気になっただけ。
自分で求めてる音が出ない。
そんな不快感がピアノを弾いている時にはあった。
でも…そんなことも忘れられるような音だった。
その時だけは天才少年ピアニストと言われて嬉しかった。
「き、君ってヴァイオリン好きなの?」
「うん!大好きなんだ!細かい音をたっくさん出せるからすっごい楽しいんだよ!」
「そ、そっか。」
「君もピアノ好きなの?」
「ぼ、僕は…ピアノは好きじゃない…」
きっとびっくりするよな。
天才少年ピアニストってまで呼ばれてるのにピアノが嫌いなんて…そう思ってた。
けれど菜穂は違った。
「そっか!じゃあこれから好きになるんだね!ピアノは動くの大変だもんね!きっとこれからすごーく楽しくなるよ!」
こんなこと言ってくれるなんて思ってなかった。
皆大人でも子供でもピアノを弾くなら好きじゃないといけないんだと言ってたけどこんなことをいわれるのは初めてだった。
「そっか…これから…かぁ?」
「うん!これからだよ!私もこれから上手くなるもん!大人にも負けないぐらい上手くなるの!」
「ぼ…僕も!大人なんかより上手くなってから天才ピアニストって言われるもん!」
その時から菜穂と一緒にヴァイオリンの音とピアノの音を奏でるようになった
2人の少ないお小遣いで買ったラフマニノフの楽譜を2人で練習して…アレンジ入れて。
凄く楽しかった。
「そうだ…そうだよ。梅雨桜の影に隠れて私のヴァイオリンを聞いていたよね。」
「思い出したか?」
菜穂が思い出したらしく話しだす。
「それからも楽譜もってよく桜の下にいった。直也の家いってピアノと合わせたりもした。よかった…思い出せたよ。」
「一つだけ…言ってもいい?」
「うん…聞かせて?」
俺は…涙目になってる菜穂を抱きしめて話した。
「お願い…死のうとしないで…!」
菜穂を強く抱きしめて言った。
「菜穂…これだけは約束して…絶対に死のうとしないで…」
「うぅ…うん…わかったよぉ…」
「俺が生きてて楽しいことなら教えてやる。だから絶対死ぬな。」
「ヴァイオリンって今でも弾けるかなぁ?」
突然聞いてきた質問に俺はすぐに答える。
「記憶で覚えてなくても体が覚えているよ。ゆっくりでいい。」
「ねぇ。また一緒にピアノのヴァイオリン合わせてくれる?」
「もちろん。菜穂が嫌だといっても俺はやりたいと言うよ。」
「直也…ありがとう…一緒にいてくれてありがとう…」
菜穂は笑顔で言ってくれた。
小さい時とは少し変わった女性らしい笑顔。
「昔この桜の下でした約束思い出した?」
「2人でヴァイオリンとピアノで舞台に立とう…だよね。」
「叶えるのには遠いかもしれないけど練習してやってみよう。」
「ラフマニノフまた練習しようね。」
「ゆっくり思い出していけばいいんだ急がなくていい。」
「うん…頑張る…天才ピアニストに合うようにね…ふふっ」
このまま俺の気持ち伝えたらだめかな。
菜穂…俺はお前が好きなんだ。でも…今は言わない。
大事な時に言いたいから。
〜菜穂side〜
直也に梅雨桜の下まで連れてってもらってから約1週間。
学校にいっても良いという許可が医者から降りたので学校に行くことになった。
直也から聞いたけど真帆さんはあの後警察に捕まって退学させられたとか…
けれども足が震える…怖くて仕方がない…腕のアザはまだ治ってないからズキズキと痛む…怖い…怖い…!
すると突然直也がガシッと肩を掴んで
「大丈夫。皆心配してた。だから…心配するな。俺もずっと一緒にいるから。」
その言葉で…震えていた足も腕のアザの痛みも怖さも全て吹き飛んだ気がした。
教室に行くとまず飛び込んできたのが環だった。
「菜穂!大丈夫だった?!気づけなくって本当にごめんね!」
環は私の事を抱きしめて言った。
「ありがとう…腕はまだ痛むけど…だいぶ治ったから。」
「よかった!本当によかったよ!なにかあったらすぐに言うんだよ!出来ることは全部やるから!」
「ありがとう…本当にありがとう…。」
クラスの子もよく話しかけてきた。
「怪我大丈夫?」とか「何かあったら相談しろよ」とか。
先生にも少し話を聞かれたけど…よかった。
私ここにいてもいいんだって凄く思った。
昼休みには一樹君と環と一緒に屋上で食べた。
「お、菜穂ちゃん!怪我大丈夫だったか?」
「うん。だいぶ治ったよ。」
「学校で会うことあんまり無かったよな。昼休みなんだしゆっくりしようぜ?」
「心配ありがとう。お弁当はゆっくりたべたいかな」
「菜穂〜!私も構ってよ〜!」
「あはは!菜穂ちゃん人気者だねぇ?傷が開かないようにな?」
3人で盛り上がって静かに座ってる直也と話したくって直也の近くにいった。
「直也のお弁当凄く美味しそう!野菜の肉巻きとか…ポテトサラダとか栄養も凄くとれてる!」
「これ…俺が作った。」
えぇ?!ちょっとまって?!私より家庭的じゃん!
それが顔に出たのか直也は意地悪そうに
「俺は料理得意。」
と言ってきた。ちょっと腹立つ…
「こいつ料理は上手いよなー栄養バランスとか考えられてるし。菜穂ちゃんせっかくだから少し貰えば?」
「え?えっと…」
「食べたいの?」
う…たべたいけど私だけ貰うのはな…
顔に出やすいのかな私。気づいたらしく
「菜穂のと交換なら。」