「世界は、人間が生み出した概念だから、人間が消え去れば世界もまた消えるんだよ」
「はぁ……」
突然意味わからないことを呟くな。そう言おうとした言葉は飲み込んだ。幼馴染が真剣な目をしていたからだ。別にそんな目をしたってイケメンになるわけでもあるまいし、私としては何とも思わないのだが、きっと言葉を発せなかったのは彼が考えていることが初めてわかったからかもしれない。
「世界が終わることは怖い? 死ぬことは怖い?」
「いや……、そうだね、どうせ夢も何もない私としては、むしろ都合が良かったのかもしれない。終わってしまえば、もう何も考えなくていいんだし」
「ふぅん、死んだ後のこととかどうでもいいの?」
その科白に、ハッと鼻で笑う。
「何言ってんの。あんなものが落ちてきたら、地球なんて木端微塵だ。みんな同時に一瞬で消え去るんだよ。なのに何でそんなことを気にする必要があるの」
「だよなあ……」
若干彼の声のトーンが落ちる。それを感じ取って私は思う。おくびょうもの。
「……何?」
「いや、さ、この状況を怖がっている人もたくさんいるからね……」
そう言って幼馴染が見せてきた画面。そこには『おお、神よ!』だとか『なんでこんな目に……』だとか。前半はともかく後半はこの理不尽に嘆いているだけだと思うぞ、幼馴染よ。
「で、何が良いたいの」
「あー、うん、うん……」
幼馴染は曖昧に口を濁す。なんだよ、はっきりしろっての。彼が思っていることを知っていて、それでも受け入れてあげようとしている私がいるんだからさ。
そうして私は背後にいるこいつを呆れた目で見ようとした。