世界は、終わりを迎えるらしい。

昨日の夜の、日付が変わる時間まで薄っぺらい箱の中で口を開く大人の綺麗なお姉さんはそう告げていた。流れるテロップには『衛星が落ちてくる!』だの『世界の終わり』だのと物騒な文字列が踊っている。その反動か、今日の画面の中は昨日までとは打って変わって画面の中の人たちがワハハと笑って騒いでいた。緊急報道のせいで放送延期となっていたバラエティー番組だ。別に面白くもなんともなくて他局へとチャンネルを変えてみても、結局どこもかしこも同じようなものだった。
はあ、と溜息を一つ。そしてテレビの電源を消す。
「暇、だ……」
そうポツリと呟く。こんな状況のせいか、誰も彼も仕事をしていない。たとえ仕事をしている奴がいるとするならば、それはブラック企業勤めの家族も恋人もいない寂しい人間だけだろう。だから、外へ出かけてもお店なんか何一つとしてなってはいないし、何かしら稼働しているものは元々プログラミングされているモノがプログラム通りの動きを延々と繰り返しているだけだ。暇。
もう一回そう呟こうとしたところで、部屋の窓がガラリと開いた。
「やあ」
「……やあ」
そこから顔を覗かせたのは隣に住んでいる生まれたときからの幼馴染だ。お互いの部屋の窓が異様に近いせいで、この窓は二人の行き来用の玄関となっている。こちらとしては立派な乙女なのだから、正直言ってそのような状況はご遠慮したい。だが、それも今となっては酷く今更だ。
「何しに来たの」
「暇だから来た」
「……」
なんとまあお前もか。二人揃って暇とか、なんというシンクロ。嬉しいような嬉しくない様な……うん、ごめん我が幼馴染よ。さっぱり嬉しくないわ。むしろ虚しいわ。
「お前な……」
酷い、酷いよ、お前の幼馴染は傷ついたよ!
呆れるほどの棒読みでそう叫ぶ幼馴染を横目に時計を見る。午前十時三十六分。こんな時間いつもなら寝てるのにな、と考える。
「で、どうよ? 世界最後の日は」
「どうもしない。いつも通り」
強いて言うならいつもの休日では考えられないぐらい早く目が覚めてしまったことだろうか。それとも暇なことか。