夜風が私の頬を掠める。
ざわざわと風に騒ぐ木々。
真実の廻廊にいる間すっかり夜になってしまった。
この調子だとロイのもとへ行くのは明日になってしまいそう。
携帯していた小型のランプが照らす夜の小道。
朧月のぼんやりと鈍い月明かりは、静かに優しく私を導いて。
「結構歩くんだよな…この道」
ぼそり呟いた独り言も夜風が攫っていく。
“孤独”
そんな言葉が似合う闇。
どれだけ歩いたことか、暗がりの先に私と同じようなランプの光が見えてきた。
「――ん…誰だろう?」
徐々に近づいていくと、その人物は私に手を振っていることがわかってきた。
段々と鮮明になっていく人物の姿。
私より高い背丈。
青みがかった黒色の短い髪の毛。
宝石のような紫の瞳の青年…。
「――ソラ。こんな時間にどうしたんだ?」
薄明かりの中、小さく輝く二つのランプ。
「――リゲルっ」
驚く私を見て笑うリゲルの右目の下から頬にかけて。縦に連なる青い涙と黄色い星のアザ。
本人曰く生まれつきらしい。