足元の古い石畳は所々ひびが入り、青々とした苔に侵食され始めている。
古いのに、いつでも綺麗な姿を保つこの庭園。
真っ赤な薔薇が咲き誇り、見る者を魅了する…そんな魔力を持つ。
規則的に立ち並ぶ白い柱は途中で折れたように崩壊しているもの、蔓に巻き付かれているものなどひどい有様。
しかしその光景すらも神秘的に見える。
ガーゴイルのような姿をした白い石像。
精巧な彫刻が施された噴水も未だ枯れることはない。
薔薇が彩るアーチをいくつも潜り、白いベンチが置かれた広場のような場所に出る。
いつもロイは此処に繋がれている。
白い広場の片隅に設置された白く大きな鳥籠。
厳重に鍵が掛けられていて私の力では決して開かない。
ロイは鳥籠の外の世界を知りたがっている。
籠の中の鳥は大空を羽ばたく夢を見る…。それはたぶんロイも同じ。
だから私がロイに話すんだ…。外の世界のことを。
「ロイ、来たよっ」
私が声を掛けると鳥籠の中で彼が動いた。
「ソラ…?」
ロイは鳥籠の柵から、恐る恐る包帯に包まれた腕を伸ばした。
私は直ぐに鳥籠に駆け寄り、ロイの手をぎゅっと握る。
「ありがとう。ソラが来てくれて嬉しいよ」
そう言って笑顔を浮かべるロイが堪らなく愛しかった。