その駄菓子屋も、市内から離れた、町外れの小学校からの帰り道にある、小さな小さなお店だ。
車2台すれ違うのがギリギリくらいの道路に民家や所どころに八百屋さん、雑貨屋さんが並ぶ一角。
家の一部をそれ用にした、2階建ての古民家だ。
店先には所狭しと駄菓子の瓶が並び、袋入りの小さなスナック菓子やら飴が並ぶ。
業務用のアイスクリームの冷蔵庫が外の軒下から出たテントの日陰に置いてある。
「あんた、またおねだりしたね??」
「おねだりなんてしてません」
5歳上の姉、菜月(ナツキ)に睨まれて、そっぽを向く。
父はサラリーマン。
母はパートに出ていて、姉1人。日曜はたまにみんなで出掛けたりしていた。
当たり前のようにあった景色。
当たり前のようにあった人たちの笑顔。
そんなささやかな風景に幸せを噛み締めていたんだろうな。