とはいったものの。
この家で二人きりになる。ほぼ見ず知らずのこの人と。
お父さんとたいして年も変わらないように見える。
―――まあ、大丈夫か。
わたしなんか子供だし。なにか問題が起こるとも考えられない。
「……あの、もし、…奥さまやご家族がいらっしゃって、ご迷惑なようなら、もちろん無理にとは言いません。また改めて来ていただいても、いや、来てくださらなくても」
何が言いたいんだわたしは。
でもこのまま、はいさようなら、という別れ方をして、二度と会えなくなるのが嫌だった。
なぜだかわからない。
独りになるのが不安なら、近所のおばさんとかに手を貸してもらえばいい話だ。
それなのに。
なにかが彼を引き留めた。
「いないよ。いていいのか」
静かに囁いた。
それはもちろん、たぶん、恩人のお祖母ちゃんの孫が困って、心細くなっているからだと思ってのことだろう。
「………お願いします」
そのまま、和平さんの胸に顔を埋めて泣いていた。