とはいえ。
田舎なので近場に葬儀社などはなく、基本的にある程度都心なら、そういう施設で部屋を借り、祭壇を作って一晩付きっきりでお別れをする。
付きっきり、といってもたまに顔を拝んだり、名残を惜しみ、最期の時を迎える。
時間が取れなかったり遠方の親類で、遅くにしか来られない親近者が駆け付けてお別れを言う場でもある。
あのときはああだった、あんなことがあったなと思い出話に更けるひとときだ。
常に部屋には灯りとろうそくを点しておく。
自宅の奥の部屋で、そのままそれはしめやかに行われた。
和平さんもおそらく車で喪服に着替えて帰ってきた。
―――なんだろう。
真っ黒なスーツ。
その姿を見て、こんなときなのに、少しキュンとしてしまった。