「えっ!?誰!?」


和平さんの肩越しに、外向きの廊下の向こうにお姉ちゃんが見えた。


短大を出た菜月は、自力で東京の商社を探し、無事就職して、向こうで出会った、エリート営業マンでハイスペックなイケメンの遠田雅士(オンダマサシ)さんを口説き落として、去年結婚した。


わたしとは真逆の肉食女子だ。


訃報の知らせを受けて飛んで帰ってきたのだ。


「………まさか、彼氏????いや、そんなわけないか」


もの凄く怪訝そうに、距離を取りつつ近付いてくる。


髪を後ろでひとつに束ね、黒っぽい生地に淡い白いチェックの入ったワンピースだけれど、どことなく華やかさは隠し切れていない。


すっかり都会に馴染んでしまったような。雰囲気がグレードアップしている気がする。


「ちょ、ちょっと来て」


キョトンと突っ立っている和平さんを放置して、慌てて姉の腕を取ると、別の部屋に誘導する。