「お前が来なくなった前の日、ドアの前に崩れたアップルパイが転がってた。その後1週間経っても現れない。偶然会ったお前の友達の双子に聞いてみても、大学には来てるって言われるし。飽きたのかと思ったが、なんか違うと感じて、次の日にもう一度こんどは双子に会いにいった。そしたら…大学1年の時にたった1人の肉親である祖母が亡くなって、天涯孤独になった。きっと、先生の噂が本当なら、御曹司と自分では境遇が違い過ぎるから、離れたんじゃないかって。」

傷ついた顔の先生。

なんで先生の方がそんな顔…。

『…違いますよ?飽きたんです。』

努めて冷静に。

先生はふっと笑って。

「じゃあ、また惚れさせるだけだ。こんどはオレが追いかけてやるよ。」

自信満々にそう言われる。

『なんでっ…。』

「言っただろ?好きだからだよ、蓮華。」

名前…!

名字も呼ばれたことなかったのに、初めての名前呼び。

「これから、毎日昨日よりも蓮華を好きになる。だから、号泣した可愛い顔もいいけど、今は笑え。今見たいのは可愛い笑顔だ。」