「それよりも、肝心な問題を解決しないとな。

友達はいないんだろう?」

そう聞いてきた津田に、
「うん、いないよ。

大学に入ってからやっと友達ができたんだもん」

安里は答えた。

「…いじめられた、んだよな?」

「うん、無視と仲間外れ」

安里は呟くように返事をすると、枕に顔を埋めた。

上京するまでの18年間の思い出は、つらくて苦しい思い出しかなかった。

楽しい思い出が1つもないのは、全て自分を産んで育てた両親のせいである。

――安里、僕たちは君を思っているんだよ

――そうよ、これは安里ちゃんのためなのよ

とっくの昔に離れたはずの両親の声が聞こえたような気がして、安里は両手で耳をふさいだ。

「――安里…」

安里のつらくて悲しい過去を全て知っている津田は呟くように名前を呼ぶと、耳をふさいでいる彼女の長い髪を指先でなでた。