俺たち兄弟は、何をしても許される。
何故ならば___
名声、地位、富、容姿、共に完璧だからである!
例え、学校の奴らを怪我させようが、先生達に反抗しようが、学校の校則を破ろうが___
全てにおいて許される。

だが、あの女、『川嶋有紗』が現れるまでは…









〜学校〜


「ねぇ、聞いた?」


「何を?」


「今日、転校生が来るんだってさ!それも、すっごくイケメンでお金持ちの兄弟なんだって!」


「ふーん。」


「全然、興味無さそうね。有紗…」


「だって、興味ないんだもん。」


「何で、そんなこと言うのよ〜」

恵美がつまんなそうに言ってくる。


「いやいや、たかがイケメンで金持ちだからって、そこまで本気にはならないよ。」


「でもさ、もしも付き合えたら、毎日高級なプレゼントを用意してるかもよ!」

恵美が得意げに言う。


「ないない…」

と、鼻で笑う有紗。


「はーい。席に着いて!みんな知ってると思うけど、今日は、転校生を紹介しまーす!榊原くん。入ってきて。」


「はい。」

ガラガラ

扉の開く音と共に、美形の好青年が教室に入ってきた。


「榊原亮哉です。よろしく。」


「「キャー!!!!!」」

亮哉の自己紹介直後、女子達の黄色い歓声が教室中に響いた。


「じゃあ、榊原くんの席は、川嶋さんの隣ね。川嶋さん、手を挙げて。」


「はい。」


「榊原くん。あそこに座ってね。」


「はい。」





「よろしく。川嶋さん。」


「よろしく。」

無愛想に返事をする有紗

その一方で、亮哉は楽しげな笑みを浮かべていた。

(なかなか、面白いやつだな。いいおもちゃができた。)




「はーい。じゃあ、今日の授業はここまで。川嶋さん。榊原くんに、学校案内してあげてね。」


「は、はい。」


「いいな〜、川嶋さん。」
「羨ましい〜」
などの声があがる


「有紗、頑張って!」


「全然、やる気ないんだけど…」


「まぁまぁ…」




「じゃあ、行こうか。榊原くん。」


「おう。」






「ここが、理科室。」


「ここが、図書館。」

淡々と教室紹介をする有紗。






「これで、最後だよ。何か、質問ある?」


「ある。」


ドン

亮哉が有紗に壁ドンをし、こう言った。


「なぜ、俺に興味を示さない。」


「は?」

きょとんとする有紗。さらに、亮哉は質問を続ける。


「俺の顔は、イケメンだろ?」


「榊原くんは、ナルシシストなの?」


「ナルッ!?」

有紗の発言に衝撃を受けた亮哉は、壁ドンをやめた。


「質問が終わったようだから、私は帰るね。じゃあ、また明日。」


「ちょっと待ってよ。」


「何?まだ何かあるの?」


「川嶋さんさ、俺の女になる気はない?」


「は?」


「悪い話じゃないでしょ?どう?」


「馬鹿言わないで。ちょっと顔がいいからって、そんなに威張ってさ、私はそんなに軽い女じゃないから…」

有紗は、冷酷に亮哉に言い放った。


「川嶋有紗か…いいじゃん。ますます、面白くなってきた。」

有紗の感情とは裏腹に、亮哉はますます興味を示していた。




「もしもし、俺だ。今から迎えを頼む。」




〜榊原家〜

「おかえりなさいませ。亮哉様。」


「おー…」


「郁人様が、お呼びです。」


「郁人兄が?わかったよ。」



コンコン


「郁人兄ー。入るぜ。」

ガチャ


「遅かったな。お前が1番最後だ。」

と、亮哉に言い放ち、偉そうに座っている郁人。


「で?何の用だよ?」


「学校、お疲れ様。どうでしたか?」

と、敦也が問いかける。


「いいおもちゃが見つかった。」


「え?見つかったの!?誰誰ー?」

と、興味津々に聞く斗真。


「同じクラスの川嶋有紗ってやつだ。」


「今度のやつは、大丈夫なんだろーな。前のやつは、惚れた時間が早かったから、面白くなかった…」


「ほんとだよ!全く、ダメだったよね。」


「貴方達は、女性をそんな目でしか見ていないんですか?」


「そういうお前が、1番腹黒だろ。この前だって、お前が落としたんだろーが。」


「あ、あれは…」


「結局さ、『貴方なんて、最初から興味がなかったんですよ。』って言って捨てたからね。最低だよね〜」


「そういうお前も、一緒だろ。」


「僕は、最初から捨てる気でいるんだよ?」


「やっぱ、末っ子が1番怖いね〜」


「だな。」

俺たち兄弟は、ターゲットになった女を俺たち兄弟が惚れさせるっていうゲームをしている。
相手が惚れたら、捨てる…
大体、俺たち兄弟に興味がない奴がターゲットになる。

今のターゲットは、『川嶋有紗』だ___


「で、どうするんだ?俺とあつ兄は、接点ないぞ。」


「いつもみたいに、家に招くつもりでいる。」


「僕は明日から学校だから、僕と亮兄が学校にいる間に仕掛けるよ。」


「でも、今回は手強そうですね。」


「大丈夫だろ?女なんてどれも一緒だ。」


「じゃあ、明日決行で。」


「りょーかい!」


「では、解散しましょう。」

敦也の一言で、解散する兄弟。


「亮哉。」


「なんだよ。」


「しくじんなよ。最初が肝心だからな。」


「わかってる。」

亮哉は、自信満々に答えた。不敵な笑みを浮かべながら______





〜学校〜

「亮哉様、斗真様。いってらっしゃいませ。」


「おう。」


「はーい。」


「おはよ〜。榊原くん。」


「おはよう。」


「あれ?弟さん?」


「そうだよ!僕の名前は、榊原斗真っていいます!よろしくね。先輩♡」


「「可愛い〜!!!」」


「ありがとうございま〜す。」


「じゃあ、榊原くん。教室でね。」


「おう。」



「で、どっちがターゲット?」


「どっちでもねーよ。」


「だよねー。あんなぶりっ子、絶対に無理だもん。」

斗真は、満足げに言った。


〜教室〜

「で、どの子?」


「あ、あいつだよ。ほら、黒髪の…」


「あー、あの子ね。清楚そうだね。」


「なかなかのもんだろ?」


「見た目は良くても、中身だよ。」


「だな。よし、作戦開始だ。」





「おはよ、川嶋さん。」


「どーも。」

昨日のこともあってか、ドライに挨拶を返す有紗。


「昨日は悪かったよ。俺もさ、ノリで言っただけだしさ。あ、こいつ俺の弟なんだ。紹介するよ。」


「先輩、おはようございます!僕は、榊原斗真って言います!よろしくお願いしますね?先輩!」


「うん。よろしくね。」


「あ、ねぇねぇ、先輩。」


「何?」


「僕、勉強のことで悩んでて…もし、良かったら先輩が僕の家で勉強を教えて欲しいんだけど…ダメですか?」


「榊原くんに、教えてもらえばいいじゃない?」


「亮兄は、バカだから。ね?亮兄。」


「そ、そうなんだよ。だからさ、俺の学力向上のためにも、頼むよ〜。川嶋さん。」


「わかった。いつなの?」


「お!話がわかる人だね!明後日は?」


「いいよ、何にも予定ないし。」


「ありがとうございます!先輩!じゃあ、明後日に、また会いましょうね?」

そう言って、斗真は去っていった。

(川嶋有紗って人、すごく落としがいがありそ♪楽しみだな〜)



「ねぇ、川嶋さんってさ、どの教科が得意なの?」


「別に、得意な教科も苦手な教科ない。」


「そうなんだ〜。」

(意外とガードが硬いな…が、これも許容範囲だがな。)


「じゃあさ、川嶋さんって、休日何して過ごしてるの?」


「読書」


「どんなの読んでるの?」


「ミステリー小説」


「へー、意外なんだけど。」


「そう。」


「川嶋さんって、お菓子作りとか好きなの?



「普通」


「どんなの作るの?」


「基本的には、洋菓子が多いかな」


「そうなんだ〜。川嶋さんって、すごい女子力高いんだね。」


「周りの女子ほどではないけどね。」


「いやいや、川嶋さん、魅力的だから、モテるんじゃないの?」


「モテない。というか、興味ない…」


「ふーん。」

(ますます、興味が湧く女だな)


「そう言えば、川嶋さん。いつも一緒にいる友達は?」


「今日は、風邪で休みだって。」


「大丈夫?」

(これは、好都合♪)


「だから、今日は、お見舞いに行くの。」


「お大事にって言っといてよ。」


「わかった。」

それから、一日中ずっと、亮哉は有紗にちょっかいをかけまくった。
そして、放課後になった。


〜放課後〜

「じゃーね!川嶋さん!また、明日!」


「うん。」





「あ〜、亮哉♡」


「じゃーな!」


「ちょっと、待ってくれてもいいじゃない!」


「悪い悪い。で、どうした?こんなにもたくさん可愛い子が来るなんて。」


「大したことじゃあないんだけどぉ、川嶋さんと付き合ってるの?」


「なんで、そう思うんだ?」


「だってだって、うちらのこと全然、構ってくれないじゃん!」


「眼中にあるのは、お前らだけだよ?」


「「「「キャー!!!!!」」」」


「じゃーな!子猫ちゃん達!」


「亮哉も、気をつけて帰ってねぇ〜♡」


「ありがとな!」




〜車の中〜

「おかえりなさいませ。亮哉様。」


「あぁ。」


「亮兄、遅かったね?何かあったの?」


「ちょっと、雌犬に捕まった。」


「何で?」


「川嶋有紗に構いすぎだって、言われた」


「まぁ、いつものことじゃん?」


「まぁな。気にする事は、ないがな。」




「到着致しました。」



〜榊原家〜

「おかえりなさいませ。」


「おぉ。」


「ただいま〜」


「やっと帰ったか、お前ら。いつもの部屋に来い。」





「で、今日の収穫はどーだった?」


「俺ら、結構上手くいってるぜ。な?斗真」


「そうそう!僕たちの家で勉強会する約束が出来たよ!」




「なかなか、やりますね。」


「だがまだ、序盤だ。失敗すれば、チャラになってしまう。」


「今回は、すごく慎重ですね。郁人」


「あれじゃね?前に1回あっただろ。あと少しのところで、バレて終わった女が。」


「あの時は、ほんとに面白かったよー!なんで、バラしちゃったの?」


「あ、あれは…口が滑って…とにかくだ!今は、川嶋有紗を落とすのが最善だろ!今日の所は、解散だ!」






〜約束の日の前日〜

「おはよー!川嶋さん!今日も綺麗だね。まるで、お姫様のようだ。」


「…」

無言で本を読み続ける有紗。


「ねぇ、川嶋さん?無視しなくてもいいじゃん!」


「そうだよ?有紗。せっかく、学園の王子様が話しかけてくれたのに…」


「ほんとに興味がないの。他の女の子にでも、話しかければ?榊原くんに話しかけられたい子なんて、山のようにいるんだから。」

好きなことである読書を邪魔された有紗は、今、非常に不機嫌である。


「あのさ、川嶋さん。明日のことを伝えに来たんだから、ちょっとは、俺と対話してくれよ。」


「そうだったの。それは、悪かったわ。」


「お、やっとこっちを向いてくれたね!でさ、明日の朝に、迎えにいくよ。家どこ?」


「いいよ、歩いて行くから。榊原くんの家を教えてよ。」


「俺の家?でかいから、すぐにわかると思うけど。」


「分かった、ありがとう。」

と無意識で笑顔を亮哉に向けた有紗はまた、本に目を移した。


ドキッ

(今の笑顔は反則だろ// って、何言ってんだ俺は!こいつを惚れさせないといけないのに、なんで、俺の方が惚れてんだよ//!)

終始動揺する亮哉だった。